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室田研究室

最近の研究テーマ

授業導入が容易なPowerPointアドイン型オーディエンスレスポンシステムの開発と評価

概要

中央教育審議会の答申では,大学の講義では教師からの一方向的な知識の伝達ではなく学生が能動的に講義に参加するアクティブラーニングや双方向型の授業の必要が述べられている。この答申ではアクティブラーニングを実践するツールの一つとしてオーディエンスレスポンスシステム(ARS)が挙げられている。ARSの授業実践は様々な分野で行われ効果が報告されている。しかし,ARSの授業導入には回答に用いるリモコンの運搬・配布・回収の煩雑さや,プレゼンテーションソフトウェアと独立の専用ソフトウェアが必要でありシームレスな利用が出来ない課題がある。

本研究では,容易な授業導入を実現し,ARSのシームレスな利用を可能にすることを目的として,ARSと併用されることが多いMicrosoft PowerPointのアドインとしてARS機能とサーバ機能を持つシステムを開発した。教師はPowerPointのみでARSを利用でき,学習者はWebブラウザから回答やコメントを送信する。開発したシステムの主な機能は以下の4点である。

  • 質問・グラフ設定機能
    選択肢問題の選択肢数と選択肢の文章の設定。またグラフの種類(円グラフ・棒グラフ)や一つのスライドで二つのグラフを提示して理解度の変化を確認させるグラフ比較機能の設定する。
  • 回答収集・グラフ描画機能
    質問を設定したスライドを提示中に学習者から回答を収集する。また,集計結果をグラフ描画してスライド上に貼り付ける。
  • 回答送信機能
    学習者は回答選択肢を複数選ぶことが出来る。また自由記述回答を送ることが出来る。
  • コメント投稿機能
    学習者は任意のスライドに自由記述コメントを投稿することが出来る。教師はスライドノートに残された投稿内容を読むことでスライド毎の学習者の理解度を把握出来る。

本システムの評価方法として,同時接続環境下でのシステムの処理時間の計測する性能評価実験と,教員免許を持つ協力者に本システムを利用して模擬授業を行ってもらいアンケートに回答してもらう機能評価を行った。

性能評価の結果,40台分の同時接続でも問題ないレスポンス速度を得られた。また機能評価実験の結果,本システムは授業導入は容易であると示された。一方で,発表者ビューを用いた際にグラフ描画を行うと反応速度に問題があることが確認された。また学習者が利用するインタフェースの改善に関する意見も得られた。

陸上競技における自律学習支援システムの開発と評価

陸上競技におけるパフォーマンスの向上には,体力面の向上の他,技術面の向上,つまり運動スキルの獲得が必要不可欠である。経験的に,同等の練習をしたからと言って,誰しもに同等の効果があるとは限らない。その背景として,一定「量」の練習を行うことで体力面の向上が見られるのに対し,技術面の向上には練習の「質」的側面が関わっている。練習の「質」の向上には,目標設定や方略,自己モニタリング,自己評価など,学習者の積極的な取り組みが必要となる。そこで本研究では,中上級者の陸上競技選手のパフォーマンス向上のための自律学習モデルの提案,および提案学習モデルを促進させる支援システムの開発を目的とし,その有効性を検証した。

複数の先行研究の結果から,運動スキルの獲得には,方略を明確にし,それについて自己評価を行うこと,またそのために内在的フィードバックと外在的フィードバック間のズレを認知することが重要であることが分かっている。そこで本研究では,この運動スキルの獲得プロセスに着目した自律学習モデルを提案し,練習日誌型の学習支援システムを開発した。従来の主に紙媒体の練習日誌と比較して,提案学習モデルに沿ってコメントを細分化すること,映像フィードバックをシステム内に設けることで,自律学習促進を促した。コメントを細分化することで,学習者の目標に対する達成度を明確にさせた他,知覚・感覚を実際にアウトプットすることで,客観的に観察される行為との結びつけを容易にした。映像フィードバックについては,練習日誌との紐付け機能・タグ付け機能・タグからの動画検索機能を設けた。この機能により,容易に過去と比較しながら動画を見られるようになった。

本システムを用いて,評価実験を行った結果,自身が設定した目標・方略に沿って,過去と比較して自己評価をしやすくなったこと,どのようにして更に良くするか検討したことにより,自律学習のサイクルが生まれていたことが分かった。つまりシステムによって,選手の感覚・知覚をアウトプットし,客観的に観察される行為との結びつけを容易にしたことで,過去の練習,また先の練習を踏まえた振り返りへと変化し,「質」向上に繋がることが明らかになった。

本研究の成果は,例えば指導者のいない環境であっても学習者が自律的に取り組むことができる環境構築に貢献し,選手のパフォーマンス向上に繋がると期待される。


Masao MUROTA, E-mail: murota (at) hum.titech.ac.jp
Last updated: 2011-05-04